戒名のおはなし(3)
10月も半ばを過ぎて、お話を書くことになってしまいました。先月までは、5戒を書きました。不殺生・不偸盗・不妄語・不邪淫と不飲酒戒です。ある法律関係の方が以前に「法律はそれを守らぬ者のまえには無力である」といっていました。
最初から守るという気のない者にとっては、何の役にも立ちません。故中村元博士は「お釈迦様の教えは、人間として生きるべき道を明らかにされたのであり、それをダルマ(法)と呼んだ」といっておられます。
私たちは集団生活をする生き物です。それぞれが自分勝手に主張したらまとまりません。自分の利益ばかり考えて行動したのでは衝突するばかりです。とくに仏法では、自分だけという考えを否定し、みんな一緒に幸せにということをめざします。回向の中で「普く世間を導いて、同じく覚路に登らんことを」(広くたくさんの人々を導き、みんな一緒に悟りの道を歩みましょう)と唱えます。
みんなが気持ちよく生活していくためには、なるべく自分の「我」を引っ込めて「協調」することが大事だと思います。5戒は、そういう面において各自が守らねばならない最低限のきまりだといえましょう。
「自分さえ」「自分の家族さえ」よければいい、という考えをみんなが捨てて、「みんなが善くなる」ということを目指したら、大変暮らしやすい社会となると思います。